Close to you
小学校の時に
肌が透けるように白くて背が高くて利発な女の子がいた
彼女はちょっと乱暴なところもあったけれど
それは弱い者いじめをする悪い男子に対してだけ
彼女は子役モデルをしていた
子供服の雑誌や商品のポスター
コマーシャルにもたまに出たりしていた
勉強が得意な子ではなかったけれど
運動会では大活躍する子だった
気がつくと彼女のまわりにはいつも
男の子が影のように群がっていた
彼女は群がる男の子達をからかったり
意地悪したりして楽しんだり
迷惑がったりしていた
男の子達は彼女になんでもいいから
かまって欲しかったみたいだった
中には屈強な男子がいて
たまに彼女をからかって
彼女を本気で怒らすようなこともあったけれど
大体はいつも賑やかな笑い声が聴こえていた
学校の帰り道ぞろぞろと男子達が彼女の後をついて回った
彼女は越境していたので電車通学だった
なので時々は学校の帰り
仲良しの女の子の家で遊ばせてもらって
夕方に帰ることがあった
そんな日に彼女が仲良しの女の子の家から出てくるまで
男子達が談合して待っていることがしはしばあった
あらまたあの子たちいるわよ
仲良しの子の母親が彼女をからかったりすることもあった
そして男子達は駅までまたぞろぞろと
彼女の後をついて行くのだった
大人になってからのことだけど
小学校の同級生の女子会があって
その時に彼女にその頃のことを聞いてみたら
男子達の関心が彼女にあることに全く気ずかなかったと言った
当時彼女には関心がある男の子がいた
ところがその男子軍団の中には
彼女の関心のある男の子がいなかった
そんなことがあって彼女は男子軍団に無関心だった
彼女はいつも思っていたそうだ
自分が親指姫みたいに小さくなって
あの人のポケットの中にいて
いつもあの人と一緒にいたい
それが彼女の願いだった
そして彼女が関心を持っていた男の子が今の私の夫だと言われたとき
数々の思い出が走馬灯のように駆け巡って言葉が出てこなかった
彼女はすぐに子供時代のことだから気にしないでねと
ふっと優しく微笑んだ
私はこういう時は何も言わない方が美しいに決まっていると思い
ただ微笑みを彼女にかえしてその場をお開きにした
正直に言えば、彼女は確かに時を経ても輝いていた
それは誰もが感じ取ることができる事だった
作りが違うというのか持って生まれたカリスマ性なのか
黙って座っているだけで絵になる
満たされている人ともいえる
経済的なことではなく存在していること自体について
彼女は満足しているように見えた
彼女は着飾ってはいなかったし
メイクが凝っていたわけでもない
肩にとどくくらいの長さの髪には
多少の白い髪も混ざっていた
シンプルな紺色のワンピースに真珠のネックレスだけをつけて
紺色のハイヒールを履いていただけだった
周りは結婚式かと思うほどの凝りようの中で
それなのにそこにいる誰よりも彼女が一番光って見えた