この空の下

短いお話

Stay My Blue

 

youtu.be

東京で会おうよ。

彼は明るく輝くように言う。

赤いアロハシャツは彼に良く似合っていた。

思えば彼は美しい人だった。

心も体も。

白いバミューダパンツに焼けた上半身がたくましくもあった。

 

遊びが目的の中で彼だけが真面目だった。

何故か彼は私を選んだ。

 

私は女友達数人と白い浜辺にやってきた。

理不尽なことばかりを要求する身勝手な男と付き合っている東京から逃れたくて。

 

手をつなごうよ、と彼は私の手を取った。

とても見晴らしの良いところがあるんだ、もっと上の方だけど。

でも夜も遅いし、また明日行こうね。

いつまでいるの。ホテルに明日迎えに行ってもいい?

悩ましい瞳で私を見つめる彼。

東京でデザイン学校に行っているんだけど、夏休みで地元に帰ってきているんだ。

東京のどこに住んでいるの?

彼氏はいるの?

私は黙って首をふるだけ。

言えないんだね、それなら俺の住所と電話番号を渡すから。

最後の日彼はホテルに来てくれて、私の手にそっとそのメモを握らせた。

さよならとだけ言った私。

 

私は東京の男とは別れた。

なんか踏ん切りがついた。

もうこれ以上許せないという気持ちだった。

ほかに男ができたんだなと、言われたけれど、何も無い私は

黙って席を立ちその場を後にした。

 

うっとおしい空気がそこら中を支配していた。

海に帰りたかった。

白い砂浜で一日中音楽を聴いていたい。

 

けれど海で出会った彼に連絡はしなかった。

どうしてもできなかった。

白い砂浜は白のままが良くて

青い空と海は青いままであってほしい・・・と思ったから。