接吻
若さって唐突さってことかもね。
彼なりに計画していたのだと思うけれど。
お誕生日だからってバイト先のお好み焼き屋さんに連れて行かれた。
パルコに入っていたちょっとモダンなお店だった。
彼は飲み過ぎるほど飲んでいた。
自分を潰すために飲んでいるみたいだった。
お酒臭くてちょっと嫌だなと思った。
冷やかされながらお店を出て彼はタクシーを私の自宅のかなり手前で止めた。
今日はありがとう、とても楽しかったし美味しかったモダン焼き。
いいんだよ、また行こうね。そう言いながら彼は突然私に接吻をした。
そして私を強く抱きしめた。
どうしてだろう。それから私は彼がだんだん嫌いになっていった。
逢っても話をしなくなった。
彼とは小学生の時の同級生だった。
大人になってから同級生の会で再会してたまに逢うようになった。
お互いに小学生の時にひそかに好き同士だったことを知った。
彼はその時大学生で私は社会人だった。
子供のころのとても楽しかった思い出。
雪合戦を屋上でした。
4人で新宿御苑に夏休みにいった。
学校の帰りに駄菓子屋に寄った。
お楽しみ会でコントをした。
そんなことが次から次に浮かんだ。
私たちは大人になってしまったんだ。
でも私はあの頃のままでいたかった。
今よりもあの頃の方が楽しかったし生き生きしていた。
もっともっと正直だったしもっともっと美しかった。